民法改正(6) 債権譲渡に関する見直し

債権譲渡をする際に、その債権に譲渡禁止特約がついていると、現在の民法では譲受人が善意無重過失でない限り、債権譲渡が無効となります。

現在資金調達の手段として、譲渡担保が一般化しています。請負契約を結んで仕事をする際に、銀行などから融資を受けるために、請負報酬債権を一旦形式的に銀行に譲渡し、銀行に返済すると債権を取り戻せるのです。返済できなければ、銀行は直接請負報酬を取り立てることができます。

この場合に、譲渡禁止特約があり、譲渡担保が無効となってしまうと、融資の担保がなくなってしまいます。そういうリスクがあると、譲渡担保は使いにくい担保であるということになり、企業は融資を受けにくくなります。

このような問題を解決するために、今回の民法改正では、譲渡禁止特約があっても無効ではなく、取り消し可能という形に変更されました。(但し預貯金を除く)

ただし、こうなると債権譲渡禁止特約が意味をなさなくなります。債権回収業者に債権譲渡されると、無理な回収がおこなわれるなど、債務者の権利を損ないかねません。そこで、債権譲渡は有効であるとしても、債務者が譲渡人に弁済しても、それは有効であるという改正も行われました。債権譲渡により弁済の相手方を固定するという債務者の期待を、形をかえて実現したことになります。

この際に、譲受人の利益を損なう可能性もあります。特に譲渡人が破産した場合に、譲受人は債務者からも譲渡人からも回収できなくなります。これを防ぐため、譲渡人が破産の場合は、譲受人は債務者に対して供託することを請求することができるようになります。

多少ややこしいですが、債権譲渡による譲渡担保が使いやすくなるための改正であると理解すればよいと思います。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。