民法改正(7) 約款(定型約款)に関する規定の新設

約款とは、大量の同種取引を迅速・効率的に行う等のために作成された定型的な内容の取引条項のことです。

例えば、JR東日本の電車に乗ると、乗客は知らないうちに、「旅客営業規則」に従うことになります。
https://www.jreast.co.jp/ryokaku/
こんな膨大な規則を、乗る前に全部理解して電車に乗る人はいません。しかし、規則に反すると損害賠償を請求することもあります。

これは一種の、電鉄会社と乗客の間の契約となります。しかし、「約款」という形式の契約は、民法上規定されていませんでした。そこで、改正民法では約款の定義を行い、「定型約款」として条文に定めたのです。(新民法548条の2)

しかし、何でもかんでも約款形式で契約が成立しまうと、利用者が知らないうちに一方的に不利な内容を押し付けられるという危険があります。

そこで、「定型約款」が契約として成立するための条件として、定型約款を契約の内容とする旨の合意があった場合や、定型約款を契約の内容とする旨をあらかじめ相手 方に「表示」していた場合に限ることにしています。

また、相手方の利益を一方的に害する契約条項であって信義則に反する内容の条項については、合意したとはみなさないという制限も設けました。

定型約款においては、変更の場合も問題になります。契約を変更する際には、相手方の合意が必要ですが、不特定多数を相手にする定型約款では、全員から合意を取り付けるのは不可能だからです。

そこで、一方的に定型約款を変更することにより、契約の内容を変更することが、一定の条件のもとで可能であることも明文化しました。

約款は日本の社会において、広く利用されている契約形態です。民法で明文化し、成立条件や変更条件を明確にした意義は、とても大きいと思います。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。