民法改正(23) 危険負担に関する見直し
危険負担とは、双務契約(売買等)の一方の債務が、債務者の責めに帰すべき事由によらないで履行不能となった場合に、債権者と債務者のどちらがその損害を負担するか、という問題です。
現行法では、債務者主義、すなわち債務者が損害を負担するため、相手方の反対給付債務は消滅することを原則としながら、特定物に関する物件の設定または移転を目的とする総務契約については、債権者主義、すなわち債権者が損害を負担するため、債権者の反対給付債務は存続します。建物の売買契約において、不可抗力の火事で建物が消滅しても、買主は売買代金を払う必要があります。
しかしこれは、買主(債権者)に過大なリスクを負わせることになります。買主は対象物に対する情報が売主ほどないので、不公平とも言えます。
そこで、改正民法では、特定物の売買等の場合でも、債務者主義を採用することになりました。不可抗力で債務を履行することができない場合は、売主の代金請求権は消滅しませんが、買主は支払いを拒否できます。もちろん、買主に帰責事由がある場合や、引き渡しの後に建物が消失した際は、買主がリスクを負うことになりますので、買主は支払いを拒否できません。
危険負担は、契約において非常に重要な論点です。特別物引き渡しの債権者主義の修正は、大きな変更点ですので、正しく理解しておきたい内容です。