システム開発の経験談(11) Web発注システム

2000年頃になると、Windowsパソコンが普及し、インターネットユーザが拡大しました。何でもそうですが、新しい技術はまず消費者で広まり、それを企業が採用するということが多いようです。Webでいろいろできるようになりましたが、企業は社外のサイトを見れないようにブロックすることが多かったと思います。社員が外のサイトで遊ぶのを防ぐためです。

しかしWebの機能を業務に活かさない手はありません。この頃営業部で取引先企業の合併があり既存の企業間システムでは対応できなくなる、ということがありました。自分がかつて担当していた企業間システムでは対応できなくなったのです。個別の商売なので、全社案件に対応する本社のシステム部では検討することができず、自分でシステム開発を担当することになりました。ユーザ兼プロマネ兼ヘルプデスク担当者、というわけです。しかも取引先からの現行のEDIの終了期限は6か月というものでした。

ベンダ選定、データ交換の仕様決定、システム機能の仕様決定などやることは多く、しかも自分の担当商品の対応も同時並行で行うという、今から考えるとかなり無茶なプロジェクトです。中でも既存の企業間システムは受発注専用端末を設置しており、新EDI用に新たに専用端末を購入することができないことが、最大の問題でした。

考えたあげく、Webの技術を受発注端末に利用できないかと考えました。今から考えれば、ごくあたりまえのWeb端末ですが、当時はこれで受発注専用端末に代替できることは、唯一の解決策だったのです。ベンダと相談し、特にセキュリティ対策としてSSLを採用(これも現在ではあたりまえ)、証明書は自分で取引先を訪問して、電子証明書が入ったフローピーディスクをお渡ししてインストールしてもらいました。(いまならオンラインでやるところです)

奇跡的に、6か月後の4月から、Web受発注システムが稼働したときは、ほっと安心しました。その後本社の受発注システムは全て受発注専用端末からWeb受発注方式に変更されました。なぜ6か月でできたのか、今でも冷や汗ものですが、一番難しい要件定義の工程を、自己完結でできたということが大きかったかもしれません。ユーザへのヒアリングベースで要件をまとめていたら大変だったでしょうが、何しろ自分自身がキーユーザなのですから、自分で要件を決めて、自分でそれを整理し、自分でベンダに最終案の状態で渡すことができます。ユーザへのフィードバックも不要です。通常ならトラブルを防ぐために、この工程でプロマネを入れるところですが、それを無しですませることができました。
色々な意味で無理はしましたが、やってよかったと思った案件の一つです。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。