民法改正(2) 消滅時効に関する見直し①

消滅時効とは、権利を行使しないまま一定期間が経過した場合に、その権利を消滅させる制度です。消滅時効という考え方は、2つの理由があります。一つは、長期間の経過により証拠が散逸し、自己に有利な事実関係の証明が困難となった者を救済し、法律関係の安定を図るということです。もう一つは、格言ですが、「権利の上に眠る者は保護しない」ということです。

ところが、現在の消滅時効の制度は複雑です。一つは職業ごとに消滅時効期間が異なることです。飲食店は1年、弁護士報酬は2年、医師の医療報酬は3年、といった具合です。飲食店はまだわかるとして、弁護士と医師では、どう違うのでしょうか。

更には、不法行為の損害賠償請求権は、加害者及び損害を知った時から3年または不法行為の時から20年となっていて、一般的な消滅時効である、権利を行使できるときから10年とは、全然違います。

消滅時効は、期間が短い方が法的には安定します。しかしやみくもに短くすると、相手方の権利を侵害することになります。

これらの考え方を整理し、新民法では、一般的な「知った時から5年」または「権利を行使できるときから10年」とし、短期消滅時効の考え方はなくなりました。

また不法行為の損害賠償請求権の消滅時効も、「知った時から5年」または「不法行為の時=権利を行使できるときから10年」と揃えられました。ただし、生命・身体の損害は重大な法益侵害であることから、「知った時から5年」または「不法行為の時から20年」と、現在の制度の期間が維持されています。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。