民法改正(3) 消滅時効に関する見直し②
時効には、これまで「中断」と「停止」という概念がありました。「時効の中断」とは、それまでに経過した時効期間がリセットされ、改めてゼロから起算されることです。「時効の停止」とは、時効が完成する際に、権利者が時効の中断をすることに障害がある場合に、一定の期間時効の完成を猶予するものです。
時効の中断事由としては、例えば債務の承認、履行の請求などがあります。履行の催促をすると時効の進行が一旦停止し、6か月以内に裁判上の請求をすると、時効が催告の時に遡って中断します。
時効の停止事由としては、離婚、相続などから6か月は、時効が完成しません。
この時効の中断や停止は、考え方が複雑だという問題がありました。中断の場合、停止してから中断する場合と、いきなり中断する場合があります。停止にも、催告と離婚後6か月とでは、意味が異なります。
そこで、「時効の中断」を「時効の更新」、「時効の停止」を「時効完成の猶予」という2つの概念に整理したのが、今回の民法改正です。
「時効の更新」は、文字通り時効がリセットされ、新たに時効が進行します。「時効の完成猶予」は、その期間は時効が完成しませんが、時効自体がリセットされたわけではありません。「催告」して時効の完成が猶予され、さらに6か月以内に提訴することでさらに時効の完成が猶予され、勝訴すれば時効が更新されます。
さらに時効の完成猶予には、2つのルールが設けられました。天災などの場合、これまで障害が去ってから2週間以内に請求しなければ時効が完成していましたが、これが3か月まで延長されました。災害時に2週間以内に裁判上の請求をするのは困難だからです。また、協議による時効の完成猶予が認められるようになりました。ただし書面での合意が必要です。
実務的には大きな変更はありませんが、時効中断、時効停止の考え方が整理されたという意味では、改正の意義はあると思います。