システム開発の経験談(16) クラウドサービス

10年前に帰国して情報システム部署で仕事をするようになってから、デジタル技術の進化は凄いものがあります。その一つがクラウドです。ベースとなるのが、サーバの仮想化技術で、一つの物理サーバに、複数の論理サーバを搭載することができます。それまで、WebサーバとDBサーバを2台設置してた場面で、インフラとしては1台の物理サーバでカバーできるようになりました。ミドルウェアとしては、VM WareやHyper-Vなどがあります。

単なるサーバの仮想化であれば、サーバを自前で所有するということではそれまでとは違いがありませんが、さらに進んだ技術として、サーバをサービスとして提供する、いわゆるクラウドサービスが提供されるようになりました。物理サーバ上の開発しかしたことがなかった私には、大きな技術革新だと思われました。

クラウドが登場した当初は、大切なデータを会社の外に置くことは情報セキュリティ上問題がある、とされて、機密情報はクラウドに置かないようにされていました。

ところが、企業に対するサイバー攻撃が頻繁に行われて、被害も拡大するなかで、企業単独でセキュリティ対策を講じるよりも、セキュリティのしっかりしたパブリッククラウドに置く方が安全だ、という方向に世間が変わってきたと思います。事務所の金庫より、銀行の貸金庫の方が安全だ、というような理屈です。

クラウドサービスにも、IaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)、SaaS(Software as a Servie)などいろいろな形態があります。システム開発での物理サーバの代替としては、PaaSが一般的かと思います。これはサーバ機能とOS、ミドルウェアまでを提供するものです。さらに、アプリケーションまでサービス化したものがSaaSです。

クラウド化のメリットは、資産を持たずに済むこと、拡張が楽で、容量を安全サイドに設定して過剰な初期投資を避けることができること、様々なミドルウェアを活用できることなど、様々です。クラウドとしては、AWS(Amazon Web Service)や、Microsoft Azure,Google Cloudなど様々ですが、AWSが最大手で最も進んでいるようです。

システム開発の際のインフラ設計において、クラウドの検討は必須となりました。サーバやミドルウェアの初期投資を抑え、変更もできるのは大きなメリットだと思います。またバックアップやサーバの分散設置などのBCP対策も、サービスとして提供されます。一方で既存のインフラ資産があれば、その転用も比較検討対象となるでしょう。ただ、今後物理サーバのリプレースもどんどん進むでしょうから、本流はクラウドということになるのではないでしょうか。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。