システム開発の経験談(15) 基幹システム

2010年にマレーシアから帰国して、本社の情報システム部署での仕事をするようになりました。子会社のIT支援が主な業務です。そこで多くのシステム開発をサポートしましたが、開発手法としてパッケージを利用する機会が多くなりました。私はそれまで、要件を整理して、必要な機能を作りこむという方法しか知りませんでした。しかし世の中にはパッケージソフトというものが存在し、標準的な機能は準備されていて、必要な個別要件だけを開発すればよいのです。

中でも、基幹システム(ERP = Enterprise Resource Planning)は各種のパッケージがあります。私が着任早々の仕事で、海外での新会社設立を支援する際に、本社で開発した関係会社向けの基幹システムをパッケージ的に導入することで、4か月の準備期間で稼働することができたことがあります。基幹システムは、その会社のベースとなるシステムですので、企画から稼働まで半年以上かかるのが通例ですが、パッケージ導入により期間を短縮することが可能だったのです。

パッケージの活用は、とても合理的な考えですが、良い面と悪い面があると思いました。よい面は、ある程度標準化できる機能は、業務プロセスをそれに合わせることで、システム開発費用をおさえ、業務プロセス自体も整理しやすくなることです。悪い面は、そもそも会社の業務に合わないパッケージを導入して業務プロセスを無理やり合わせようとすると、現場の生産効率が大きく下がってしまうことです。当時「体に合わせて服を作るのではなく、服に体を合わせる」というような考え方が経営者に横行していて、その結果要件定義がゆるくなり、大幅なスケジュール遅延が起きたケースも少なくありませんでした。

今では、ERPをスクラッチ開発するケースは少なくなりました。いろいろな業務に対応できるようERPが進化していますし、会計はパッケージ、業務はスクラッチなど、適切な選択ができるようになってきているからだと思います。

あくまで業務プロセスとシステムは車の両輪です。どちらかに偏ることなく、最適なバランスをとるようにするのが、プロマネの妙だと考えています。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。