AIの壁

AI(人工知能)について、著者が4人の専門家と行った対談集です。4人とは、プロ棋士の羽生善治氏、マクロ経済学の井上智洋氏、哲学者の岡本裕一朗氏、情報学者の新井紀子氏です。

現代は、AIがプロ将棋士に勝ち、自動車の完全自動運転、AIによる医療診断も現実のものになりつつあります。こうした時に、交通事故や、医療過誤がおきた時に、誰が責任を取るのか、どう説明するのか、重大な問題です。

また、AIが人間の仕事を奪うのではないか、という社会的な課題もあります。

さらには、昔の映画にも、コンピュータが自我を持ち、人間を支配するというテーマがありました。AIが勝手に発達して人間を脅かしてしまったら、どうしたらよいのか、考えてしまいますね。

私は、AIがどれだけ発達しても、人間との決定的な違いは越えられないと思っています。それは、自我や感情など、個人の存在そのものです。AIはあくまで統計的な手法を極限まで発揮した分析ツールであって、それを使うのは人間です。AIを使って発生する結果に対しては、人間が責任を持たなければなりません。

人間の自我は、生まれたばかりの赤ちゃんにもあります。泣いたり笑ったり、必死になって自己主張する姿を見ると、生命の力はすごいと思います。

AIのデータ分析は、過去のデータに基づく統計的な手法です。将棋でAIが勝っても、どうしてそのような手をさしたのか、AIには説明することができません。責任とは、結果に対する説明を伴うものですが、AIには説明できないのです。

プロ棋士にAI将棋が勝つのは、いつかは現実のものになるものでした。でも、100m競走でスーパーカーが4秒で駆け抜けたって、ウサインボルトの世界記録はいささかも色褪せません。スーパーカーと人間を同じ土俵で比較すること自体が意味を持たないからです。

AIはあくまで高性能なツールであって、人間はそれを使いこなす主体であるべきだと思います。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。