経済安全保障におけるエネルギーの課題

経済安全保障において、なぜエネルギー問題が重要なのか、整理すると次のようになるかと思います。

エネルギーに関して、この10年で日本の国内外の環境は大きく変化しました。そのポイントは3つあると思います。

まず一つは、原子力発電の安全神話の崩壊です。そのきっかけは東日本大震災における福島原発の事故です。実際には起きないとされていた炉心でのメルトダウンが発生し、水素爆発もおき、廃炉まで何十年もかかるという過酷事故が発生しました。日本の原発は次々と停止され、再稼働の目処もたっていません。高速増殖炉の計画も頓挫し、先が見えない状態です。その結果、エネルギーにおける原子力の比率は、震災前の30%から、現在わずか4-5%という状況です。

次に、中国の脅威です。この10年で急速に国力を増大させてきた中国は、南シナ海に進出し、フィリピン沖や台湾周辺にも出没しています。ここは日本のタンカーが一日に何隻も往来している重要な場所ですが、防衛艦がいるわけでもなく、丸腰で原油やLNGを運んでいるのです。原発が止まり、化石燃料への依存率は80%を越えている現在、有事でタンカーが止まれば、たちまち日本の経済はストップするのみならず、国民の生活に大きな影響を与えます。

そして、地球温暖化問題です。カーボンニュートラルを目指す国際的な流れの中、日本は化石燃料への依存率が高まり、「化石賞」が与えられるなど、不名誉な状況です。そのため太陽光発電など再生可能エネルギーにシフトしようとしています。しかし、太陽光や風力など、自然エネルギーを利用する場合、安定電源とはならないため、ベースロードとして利用することができません。水素や電気自動車が注目を浴びていますが、そもそも水素を作るためには安価な電気が必要であり、結局エネルギー源の問題に立ち戻ります。

10年間でこのような大きな変化が起きており、次の10年でどうするのか、現在はターニングポイントにあると思います。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。

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