菊と刀

アメリカの人類社会学者、ルース・ベネディクトが、1946年に書いた、日本人の考え方と行動を分析した本です。

高校時代に読んだことがあって、その時は日本人について、よく分析しているな、という程度の感想でした。40年経って改めて読んでみると、いろいろと考えるところがあります。

著者によれば、アメリカ人にとって、日本との戦争は、西洋人同士の戦争とは異なる、未知の相手との戦争であったということです。何故自殺行為とも言える戦い方をするのか、何故礼儀正しいと思われる一面と暴力的な一面があるのか。著者は、1944年6月に、戦時情報局からの依頼を受け、戦争相手である日本人とその文化についての分析を始めました。
著者は、一度も日本に来たことがありません。しかし、在米日本人などからのヒアリングや資料により、驚くほど当時の日本を正確に描いています。
そして、このような分析が、連合国による日本の戦後統治に対して、深い影響があったのではないか、と思えます。そして、それが今の日本のあり方に対して、実は影響があるのではないか、ともつながっているのではないか、というような気がします。

当時は、日本は社会や家族への帰属意識が高く、そのために個人は犠牲になることが求められました。その中心となるものは、恥の文化でした。西洋の文化は罪の文化で、本人の罪意識が、行動を抑制しますが、日本は周囲の目を気にして、それが恥として行動を抑制するというわけです。だから、地域社会や家族の秩序が重んじられます。これが、著者が分析する、日本の文化です。

この本が発表された後、即ち戦後日本には、西洋的な個人の権利の尊重という考え方、日本国憲法で言えば、基本的人権の尊重、という原則が広がりました。これ自体はとても素晴らしいことです。お互いの価値を尊重することで、より社会は発展するはずです。

しかし、その一方で、社会や家族の紐帯が絆が弱くなったことは否めません。かつて家族や地域の紐帯が強かった頃は、老人の孤独死や、ひとり親家庭の貧困などというような問題は少なかったでしょう。戦後統治と、その時に作られた憲法、そしてそれに続く社会変革により、個人と社会の在り方が、大きく変わってしまったことは、間違いないように思います。

著者は、今ある日本を予想したでしょうか。西洋人から見れば、日本は大きく西洋化したということかもしれません。しかし、日本人から見れば、家庭と地域を大切にする、日本の良さが失われつつあるようにも思えます。改めて日本人の目から見た日本について、考える必要があると思いました。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。

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