ITプロジェクト84 検収

システム開発契約書での取り決めに基づき、ユーザ企業が検収を上げます。業務委託した機能・費用・スケジュール通りにシステム開発が実行され、納品されたかどうかを、ユーザ企業が確認するわけです。

契約内容にもよりますが、システム業界の慣習では、検収日を基準として契約金額の支払日が決まります。例えば、検収月末締め切り翌月末支払い、という具合です。

また、検収を上げた後は、ベンダは瑕疵担保責任(民法改正後は契約不適合責任)の範囲内でしか、不具合対応を行いません。そして、検収後の改修依頼は、基本的に追加改修となります。

2020年4月の民法改正前では、検収を上げても、瑕疵担保責任によりユーザ企業が保護されていました。しかし民法改正後、瑕疵担保責任ではなく契約不適合責任となったため、ユーザ企業の救済手段は増えたものの、契約不適合であるかどうかの判断は、より厳密に行われることとなります。

そのため、検収を上げるに際しては、安易に行うのではなく、残課題はないか、もし残課題がある場合はベンダ・ユーザ企業のどちらの負担で対応するのか、明確に決めておく必要があります。

かといって、理由もなく検収を引き延ばすのは、ビジネスマナーに反します。例えば、本番稼働の準備が完了したのの、ユーザ企業が突然仕様追加してスケジュールを延期させておきながら、本番稼働に至っていないというだけの理由で検収を引き延ばす、というようなやり方です。マナーに反するユーザ企業は、どのベンダからも相手にされなくなる可能性があります。

基本的には、システム開発が当初の要求通り完了していれば、本番稼働してなくても、ユーザ企業は検収を上げる義務があります。さらには、要求定義・設計・開発の各段階で検収を上げるような契約となっている場合もあります。この点、契約書の項目でも書いた通り、事前の取り決めが非常に重要となります。

ベンダの立場では、受注した時と、検収が上がる時が、最もうれしい瞬間です。プロジェクトが成功した際は、ベンダに対して感謝の念をもって検収書をお渡しするのがよいと思います。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。