相続(8) 法定相続分①

相続の際に、遺言書があればそれが最も優先され、それがなければ遺産分割協議書が適用されますが、遺産分割協議も行われない場合、法定相続が適用されます。正確に言えば、相続が発生した時点で、各相続人は当然に法定相続分を相続しますが、遺言書や遺産分割協議書があれば、相続時に遡及してそれらが適用されるイメージです。

法定相続分は法律上当然に適用されるわけですから、所有権を証明する必要はありません。つまり、本人でなくとも相続登記ができるということです。一人の相続人から保存行為として全相続人の法定相続分を一括して相続登記できますし、相続人に債権者がいた場合、法定相続分を債権者が代位して相続登記することも可能となります。

この場合、遺言書や遺産分割協議の場合、法定相続分以外については、対抗関係が生じます。例えば、相続人が兄弟二人で、遺産分割協議の結果、土地・建物を長男が相続することになったが、その前に弟の債権者が法定相続分で代位して相続登記をしてしまうと、弟の持ち分は、遺産分割協議の結果兄に帰属することになった共有持分に対して、対抗できることになります。これは、遺産分割協議が相続時に遡及することに対する特例であり、令和1年7月1日以降に発生した相続に適用されます。

相続が発生したまま放置しておくと、知らないうちに法定相続分で登記されてしまうことがあります。遺産分割協議が進まずに現状放置しておくと、上記のような問題が発生するリスクがあるので、注意が必要だと思います。相続登記を放置するケースが多く、所有者不明の土地・建物が社会的な問題になっていますが、こうした問題意識も働いているのかもしれません。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。