相続(12) 相続放棄

相続放棄は、相続人としての権利・義務を放棄するものです。相続する場合は、遺産はもちろん対象となりますが、債務も対象となります。親の借金を、子供が引き継ぐ、ということになるわけです。この場合、相続放棄をすると、遺産は相続できませんが、借金も相続しなくてよくなります。

相続放棄を行うと、最初から相続人ではなかったことになります。遺産分割協議にも参加できないし、法定相続分もありません。当然、遺留分もありません。子供も代襲相続できません。

手続きとしては、家庭裁判所に、相続放棄の申述の手続きを行います。「私は相続を放棄します」などと書いた私文書ではだめです。しかも、相続放棄は、相続があることを知ってから、3か月以内に行う必要があります。3か月を超えると、もはや相続放棄はできません。相続放棄の申述の際には、自分が相続人であることを証する書類、即ち戸籍謄本が必要となります。兄弟相続の場合には、亡くなった兄弟、親の分まで取り寄せることになりますから、かなり時間がかかります。場合によっては1か月以上かかることもありますので、相続放棄をする場合には、早い時点での判断が必要となります。

日頃からつきあいが薄い相続人の場合、借金の有無がわからないケースもあります。実は私の叔母が亡くなった際に、お子さんがおらず、私の父も他界しており、叔母の資産の状況が全くわからなかったため、相続放棄をしました。不動産は持っていたようですが、借金の有無がわからなかったためです。

相続放棄は、撤回することができません。錯誤取り消しはできないこともありませんが、認められないと思った方がよいと思います。時間のない中での判断が迫られますので、よく検討する必要があると思います。

借金取りにとって、相続放棄が一番困ります。彼らは、亡くなった方に借金があることを知られないように、わざわざ亡くなって3か月位たってから、相続人に借金の取り立てをします。もちろん相続があることを知ってから3か月は相続放棄ができるわけですが、明らかに死亡から3か月経ってから相続放棄の申述をした場合、借金があることをつい最近知った、と立証するのも大変です。

相続放棄については、慎重に検討するべきと思います。

投稿者プロフィール

小笠原 裕
小笠原 裕中小企業診断士 行政書士
バラの咲く街、八千代市緑が丘で、コンサルティング事務所を運営しています。

前の記事

相続(11) 遺留分

次の記事

相続(13) 廃除